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東京成城 逮捕 重要文化財の落書き(建造物損壊)事件 | 刑事事件の弁護士ならあいち刑事事件総合法律事務所

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東京成城 逮捕 重要文化財の落書き(建造物損壊)事件

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部

 

重要文化財の落書き(建造物損壊)事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

2021年12月、世田谷区在住のEは、同区の重要文化財である世田谷代官屋敷を見学した際、「いたずらでもしてやろう」と思い、屋敷内の壁面に白色のペンキで、動物の絵などを描いた。後日、警備員の見回りにより落書きが見つけられたので、監視カメラの映像を確認したところ、Eが落書き行為をしているのを発見したため、すぐさま成城警察署に通報し、その後Eは逮捕された。

この場合、Eは何の罪に問われるでしょうか。(こちらは事実に基づいたフィクションです)

 

・建造物等損壊罪の成否

お城や壁画に落書きをして逮捕されたというニュースを皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。今回のケースでは、重要文化財の壁面に動物の絵などを描いた場合です。この場合、どのような罪が成立するのか、以下検討します。今回問題となる建造物等損壊罪については、刑法260条に記されています。

 

第260条(建造物等損壊及び同致死傷)

他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

 

犯罪が成立するには、「構成要件に該当し違法且つ有責な行為」である必要があるので、構成要件に該当するか、から検討します。

第一に、「他人の建造物又は艦船を」ですが、これは本罪の客体を示す文言です。「建造物」とは、家屋その他これに類似する建築物であって、屋根を有し、壁又は柱に支えられたもので、土地に定着し、人が出入りし得るものをいいます。畳や障子などは、建造物の一部に見えますが、毀損せずに自由に取り外すことができる場合には、本罪の客体ではなく、器物損壊罪(261条)の客体になるとされています。もっとも、建造物にあたるかは「取り外し容易性」のみならず、「建造物内に占める重要性」も勘案して実質的に判断されます。判例でも、住居の外壁と接続し、外界との遮断・防犯・防音等の重要な役割を果たしている玄関ドアを、建造物の一部に当たると判断しました(最決平19・3・20)。「他人の」については、従来は民事法により決するとされていましたが、近年では刑法独自の観点から判断されることが多いです。今回のケースでは、Eは世田谷代官屋敷の壁面に白色のペンキで、動物の絵などを描きました。屋敷内の壁は取り外しが容易とはいえず、また客体が重要文化財であることに鑑みると、屋敷内の壁は極めて重要であるといえます。よって、屋敷内の壁面は「他人の建造物…を」に該当します。

 

第二に、「損壊した者」ですが、「損壊」とは、「物理的に毀損すること、又はその他の方法によって客体の全部又は一部の使用価値を減却・減損すること」をいいます。判例では、建造物の壁、窓ガラス、ガラス扉、シャッター等に3回にわたり、のりでビラを貼付した事案において、「ビラの枚数が一回に約400~500枚ないし約2500枚という多数であり、貼付方法が同一場所の一面に数枚、数十枚又は数百枚を密接集中させて貼付した等の事実関係の下では、建造物の効用を減損するもの」として建造物の損壊にあたるとしました(最決昭41・6・10)。今回のケースでは、Eは屋敷内の壁面に白色のペンキで落書きをしましたが、白色のペンキで一度落書きをされれば、元の状態に戻すことは難しく、壁面の使用価値は著しく減損しているといえます。よって、Eは「損壊した者は」に該当します。

 

次に、違法性と責任ですが、違法性に関しては正当防衛(刑法36条1項)などの事実はなく、責任に関してもEは心神喪失者等でないので、以上見てきたことをまとめるとEの行為に建造物損壊罪(260条)が成立するといえそうです。

 

・文化財保護法違反の成否

Eの上記行為には刑法上のみならず、文化財保護法にも抵触する可能性が高いです。

問題となるのは、文化財保護法第195条1項です。

 

第195条

1 重要文化財を損壊し、毀棄し、又は隠匿した者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。

 

第一に、「重要文化財を」ですが、重要文化財の定義は2条、27条に記されています。

 

 

第2条(文化財の定義)

1 この法律で「文化財」とは、次に掲げるものをいう。

一 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書その他の有形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(これらのものと一体をなしてその価値を形成している土地その他の物件を含む。)並びに考古資料及びその他の学術上価値の高い歴史資料(以下「有形文化財」という。)

二 演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(以下「無形文化財」という。)

三 衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないもの(以下「民俗文化財」という。)

四 貝づか、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとつて歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁(りよう)、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとつて芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む。)、植物(自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で我が国にとつて学術上価値の高いもの(以下「記念物」という。)

五 地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの(以下「文化的景観」という。)

六 周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値の高いもの(以下「伝統的建造物群」という。)

2 この法律の規定(第27条から第29条まで、第37条、第55条第1項第4号、第153条第1項第1号、第165条、第171条及び附則第3条の規定を除く。)中「重要文化財」には、国宝を含むものとする。

3 この法律の規定(第109条、第110条、第112条、第122条、第131条第1項第4号、第153条第1項第10号及び第11号、第165条並びに第171条の規定を除く。)中「史跡名勝天然記念物」には、特別史跡名勝天然記念物を含むものとする。

第27条(指定)

1 文部科学大臣は、有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定することができる。

2 文部科学大臣は、重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定することができる。

 

端的にいえば、歴史上又は芸術的価値の高いもののうち、文部科学大臣により重要なものと指定されたものをいいます。今回のケースでは、世田谷代官屋敷は重要文化財に指定されているものなので、「重要文化財を」に該当します。

第二に、「損壊し、毀棄し、又は隠匿した者」です。これらの行為は刑法258条から262条の2までに規定された文言と実質的に同義であるとされています。つまり、客体に応じて表現が異なるものの、その意義は「効用を害する一切の行為」であるということです。今回のケースでは、Eの上記行為は、既述の通り建造物損壊罪に該当するため、「損壊」にあたるといえます。よって、Eは「損壊し…た者」に該当します。

 

以上より、Eの上記行為には、文化財保護法第195条1項違反が成立するといえます。

なお、今回のEの行為には建造物損壊罪も成立しますが、文化財保護法も成立する場合には、特別法である文化財保護法の刑罰が科せられます。

 

・刑罰について

では、成立したとしてどのような刑罰が科せられるでしょうか。文化財保護法195条1項には、「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。」と書かれています。よって、期間については「1月以上5年以下」、罰金が科せられる場合は「1万円以上100万円以下」となります。

 

・まとめ

よって、Eの行為は建造物損壊罪(刑法260条)、文化財保護法違反(195条1項)にあたり、刑罰については「1月以上5年以下」の懲役若しくは禁錮、又は「1万円以上100万円以下」の罰金が科せられるということになります。刑に関しては、前科の有無、情状酌量の余地の有無等によって変わります。

 

 

成城警察署 〒157-0071 東京都世田谷区千歳台3丁目19-1 TEL:03-3482-0110

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