東京新小岩 逮捕 殺人未遂事件
- 2022.06.10
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 東京支部
殺人未遂事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
Aさんは、新小岩駅付近に住む知人V男さんの腕や顔を包丁で切り付け、V男さんに加療約2週間の怪我を負わせたとして,小松川警察署に殺人未遂罪で逮捕され、その後起訴されました。Aさんのご家族から依頼を受けた弁護士は執行猶予付き判決を獲得したいと考えています。
(事実をもとにしたフィクションです。)
~殺人罪~
殺人罪は刑法199条に規定されています。
(殺人)
第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
「人を殺す」とは、人を殺す意図(故意)をもって、人の生命を残絶する行為のことです。
人を殺す行為の手段・方法は、刺殺、斬殺、絞殺、溺殺、扼殺、射殺、焼殺、毒殺など様々です。
そして、人を殺す行為の結果、人を死亡させた場合は殺人既遂罪に問われます。
法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」です。
~殺人未遂罪~
殺人罪の未遂に関する規定は刑法203条に置かれています。
(未遂罪)
第203条
第199条及び前条の罪の未遂は、罰する。
もっとも、未遂に関する規定はこれだけではありません。
刑法43条、44条にも未遂に関する規定が置かれています。
(未遂減免)
第43条
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その罪を減軽し、又は免除する。
(未遂罪)
第44条
未遂を罰する場合は、各本条で定める。
未遂と聞くと罪に問われないなどと軽く考えられる方も中にはおられるのでしょう。
しかし、未遂も立派な犯罪です。
未遂罪として処罰されるには、その犯罪について未遂を処罰する旨の規定が設けられている必要があります(刑法44条)。
刑法は、既遂犯を処罰するのを原則としており、その前の段階である未遂を処罰するのはあくまで例外としているためです。
上記のとおり、殺人罪では刑法203条に未遂の処罰規定が設けられています。
未遂罪で処罰される条件は「犯罪の実行に着手すること」です。
犯罪の実行に着手するとは、犯罪の実現の現実的・具体的危険性が認められる行為を行うことです。
殺人罪でいえば人を死亡させることが「犯罪の実現」です。
すなわち、人を死亡させる危険度の高い行為が殺人罪の実行の着手といえます。
どんな行為が危険度の高い行為といえるかは個別に判断されます。
たとえば、ピストルの弾の入った拳銃で人を殺そうとする場合は、人に拳銃を向けた段階で殺人罪の実行の着手ありと判断されるでしょう。
他方で、ナイフで人を殺そうとする場合は、ナイフを被害者に向けただけでは殺人罪の実行の着手ありとは判断できないこともあります。
やはり、ナイフで人を切りつけようとした段階が、殺人罪の実行の着手があると判断されやすいです。
~殺人未遂罪の処断刑~
刑法43条に規定されているとおり、未遂罪の場合は「その刑を減軽することができる。」とされています。
減軽方法は、刑法68条に規定されています。
(法律上の減軽の方法)
第六十八条 法律上刑を減軽すべき一個又は二個以上の事由があるときは、次の例による。
一 死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は十年以上の懲役若しくは禁錮とする。
二 無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、七年以上の有期の懲役又は禁錮とする。
三 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。
四 (略)
五 (略)
六 (略)
殺人未遂罪では死刑・無期懲役よりも有期懲役を選択されることがほとんどです。
そして、殺人罪の有期懲役は「5年以上20年以下(有期懲役の上限は20年)」ですから、刑法68条3号により「2年6月以上10年以下」まで減軽されることになります。
もっとも、「減軽することができる。」と規定されているように、未遂罪だからといって必ず減軽されるわけではありません。
減軽するかどうかは裁判官の判断に委ねられています。
なお、仮に、減軽された場合は執行猶予付き判決を望めます。
執行猶予付き判決を受けるには、判決で「3年以下の懲役」を受けることが条件の一つだからです。
小松川警察 東京都江戸川区松島1丁目19-22 03-3674-0110