東京都立川市 無料相談 事後強盗事件
- 2020.02.09
- コラム
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 八王子支部
事後強盗事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 八王子支部が解説します。
東京都立川市に住むAさんは金銭に困っていたため、同じく立川市に住む友人Vさんが所有する壺を盗んでそれを売ろうと考えました。
そこでAさんはその壺が保管されている倉庫に侵入しその中を物色しましたが、物が多くあったので目当ての壺を見つけられずにいました。
Aさんが手間取っているうちに異変に気付いたVさんが駆けつけてきたところAさんは捕まりたくないと考えて、持っていた拳銃を空に向かって発砲し「近づくと撃つぞ」と叫びました。
そして、発砲の衝撃にVさんが驚いている間にAさんは立川駅の方に逃げ出しました。
このような場合Aさんにはどのような罪が成立するのでしょうか。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)
~事後強盗罪~
最初に本件でAさんはVさんの所有する壺が保管されている倉庫に無断で侵入しているのでAさんには建造物侵入罪(刑法130条)が成立します。
次にAさんは逮捕を免れるために拳銃を発砲しているところ、Aさんには事後強盗罪が成立する可能性があります。
今回は事後強盗罪の成立について説明していきます。
事後強盗罪は刑法238条で以下のように定められています
刑法238条 「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するするために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。」
条文にもあるように事後強盗は「窃盗」が上記目的で暴行・脅迫をした場合に成立するものなので、本件で事後強盗罪が成立するにはAさんが「窃盗」にあたると認められる必要があります。
ここでいう「窃盗」とは窃盗の実行に着手した者をいい、窃盗罪の未遂犯であっても事後強盗罪の主体となりえます。
よって、まずはAさんに窃盗の実行に着手したといえるかを検討していきます。
前回のブログで説明したように、簡単には刑法で定められている犯罪結果を発生させる現実的危険を有する行為を開始することにより「実行に着手」したと認められます。
本件においてAさんは壺が保管されている倉庫の中を物色しているところ、このようなAさんの行為によりVさんの壺に対する占有が侵害される危険が発生していると考えられます。
よって、Aさんは窃盗罪の実行に着手しているといえるのでAさんには事後強盗罪が成立し得ます。
そしてAさんは捕まりたくないと考えて拳銃を発砲しているので、事後強盗罪の「逮捕を免れ」るためにという要件をみたすといえます。
ただ、ここで拳銃を空に向けて発砲し「近づくと撃つぞ」と言う行為が暴行・脅迫にあたるかが問題となります。
この点暴行とは法律の用語では不法な有形力の行使と説明されるものであり、有形力とは簡単には物理的な力のことを指します。
そしてそのような物理的な力は相手の身体に接触していなくとも暴行と認められることがありますが、相手の身体に向けられる等人の身体の安全を害するものである必要があります。
本件では相手に向かって発砲したわけではなく空に向かって発砲したにすぎないので、Vさんの身体に対する不法な有形力とは認められない可能性が高いです。
しかし、空に向かって発砲し「近づくと撃つぞ」と叫ぶ行為は相手の反抗を抑圧するに足る害悪の告知といえるのでかかる行為は脅迫にあたると考えられます。
以上より、本件は「窃盗」であるAさんが「逮捕を免れ」るために「脅迫」をしたといえるのでAさんには事後強盗罪が成立する可能性が高いです。
~参考条文~
刑法第130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。